【115D29 乳児ビタミンB12欠乏症?鉄欠乏性貧血?】
さて今回は、今までの解説の中でも初登場、小児科の問題ですね!
内科・外科と並び出題頻度の高い産婦人科、小児科は国試のヤマといえそうですね。
特に小児科は必修での出題も多く、完成度が国試の合否に大きく影響しますね!
また、過去問の焼き直しが多い小児科分野は覚えるべきことをしっかり覚えれば、得点源にすることができるいわゆる"コスパの良い"科目なので、早めから学習しておくことを勧めます!
さらに、小児科は小児特有の成長・発達分野以外は小児内科の内容全てを網羅的に学習することになるので、内科領域全体の良い復習になり、直前期の勉強もおすすめです!
と小児科対策のおいしい話を一通り伝えたところで問題解説といきましょう!
【115D29 問題解説】
「4か月の男児。健康診査で体重増加不良と定頸の遅れを指摘され来院。」
『小児科ときたら年齢の法則!』(引用:MEC,Dr孝志郎)ということで4か月の赤ちゃんの成長・発達の異常についてですね。
さて原因を探るべく問題を読み進めましょう。
「母親は本児出産の5年前に胃癌のため胃全摘術を受け貧血治療薬を服用していた。3年前の第1子妊娠契機に服薬自己中断。」
「児は在胎39週6日、2,580gで出生。完全母乳栄養。身長 62.0cm(-0.9SD)、体重 5,365g(-2.0SD)、眼瞼結膜貧血様。皮膚蒼白。Moroは認めず、筋緊張は正常。赤血球 230万、Hb 8.2g/dL、Ht 23%」
母親の5年前の胃全摘の既往…服薬中断…
国試対策ばっちりの方ならピン!と来るはずです…
そう、『胃全摘後のビタミンB12欠乏→巨赤芽球性貧血』ですね!
国試頻出のこの知識、参考問題も載せておきます!(→参考:107A38)
巨赤芽球性貧血といえば、大球性貧血をきたす(参考:111I36)ということで平均赤血球容積(MCV)を計算してみましょう!
MCV=Ht(%)/ RBC(×10⁶ /μL)×10(fL)で計算されるのでしたね!
本症例では
MCV=23/2.3×10=100(fL)
ですね!
「あれ…?大球性貧血はMCV>100じゃなかったけ…」と感じた方もいると思います。
ただし今回の症例は『4か月の男児』でしたね。
ここで小児のMCVの基準値を見てみましょう。
参考資料は、『小児科学レクチャー│3巻2号付録』です。
これによると
3か月男児のMCVの下限値が74.0fL、上限値が89.0fLと分かりますね!
つまりこの年齢では、MCV 100fLでも
立派な大球性貧血であるといえそうですね!
従って治療として適切なのは
c ビタミンB12投与 (解答:c)
となるのですね!
とあっさり解いてしまいましたが、
実際、私はこの年齢のMCVの基準値など当然知らず
本番はa 鉄剤投与を選んでしまいました…。
「完全母乳栄養」にひっかかってしまったのですね。
母乳栄養での乳児の鉄欠乏性貧血については、古くの国試でも出題があります(参考:98B24(古すぎるので見なくても良いかもです))
ただこの際でも、MCVを計算すると65.6fL
と、今回の症例のMCVと比べると全然違いますよね。
先ほど示したMCVの基準値に照らし合わせても、鉄欠乏性貧血の場合はMCVの正常下限値を大きく下回っていることが分かりますね。
従って、a 鉄剤投与は誤りとなるのですね。
いかかだったでしょうか。
成人の大球性貧血に関してはこれまでの国試でも出題があったものの、乳児症例のものは初めての出題だったので、戸惑った受験生も多かったことと思います。
なんとなく『胃全摘の既往もあるし…』ってことで
c ビタミンB12投与 を選択できた方もいたかと思いますが
根拠をもとに自信をもって解答できた受験生は少なかったのではないのかなと察します。
冒頭で、小児科分野は過去問の焼き直しが多いとお伝えしましたが、もちろん本問のように新出題の知識が問われることもあります。
過去問対策に加えてポリクリなどの病院実習を通して、幅広い知識を身につけておくことが大切かもしれませんね。
まさに今、臨床実習中の学生さんは普段の実習の中で知らないこと、役立つことがないかを考えながら日々を過ごしていってほしいな、と思います。
私自身もこれからの研修で一歩一歩学んでいければなと思っておりますので
同じ『医療に携わる者』として共に頑張っていきましょうね!
以上です!
115回医師国家試験、誤答問題の全問解説はこちら→【第115回医師国家試験、気ままな研修医による全問題解説】