気ままなけんしゅー医のブログ

春から研修スタートの気ままな研修医のつぶやきブログです。

【115D56 伝音性難聴の鑑別、耳鏡検査からの判断(真珠腫性中耳炎vs滲出性中耳炎)】

115D56の解説です。

さて今回解説するのは、この解説シリーズでも初登場

耳鼻咽喉科分野の設問ですね!

実は、この耳鼻咽喉科は国家試験の中でも最も高得点を取ることが難しい分野と言われています。

MECの看板講師ことDr.孝志郎も講座の中で

耳鼻咽喉科は極端に難しい問題が毎年2~3問は出題される。国試合格のためにはその専門的すぎる問題に固執するのではなく、基本を押さえて広く浅く学ぶべき。

と伝えられていました。

例年、正答率20~30%前後の問題が出題されることも少なくありません。

膨大な出題範囲が存在する医師国家試験だからこそ、基礎をしっかり押さえた上での総合力が大切になってくるというわけですね。

過去問演習の際にも、そのような問題に出くわしたときは

「そういう知識、考えもあるんだな…」

とサクッと理解した上で他の問題へと進んでいくと良いと思います。

ただ、やっぱり自分の受験する年から数えて直近3年分の国試の過去問に関しては

メジャー・マイナー問わず確実に理解し、覚えておく必要があることは忘れずに!

MECのサマライズシリーズでも、medu4の究極マップシリーズでも

直近3年の過去問の重要性は繰り返し伝えられることと思うので、しっかりと対策を積んでいきましょう!

私のこの問題解説が皆さんの学習の一助になれば幸いです^^

と長くなったところで、解説へと行きましょう!

(写真は→medu4の解説参考に(115D56)

 

病歴・症状から適切な画像を選ばせるという耳鼻科典型の問題ですね。

鼓膜写真から適切な解答を選択する形式はこれまでも良く出題されていますが、いずれも正答率は低く、多くの受験生を悩ませています。(参考:111I7,正答率66%

 まずは過去問の知識をもとに選択肢で示された各写真の疾患をチェックしておきます。

a:正常鼓膜(ツチ骨柄、光錐がきれいにみえていますね。穿孔や充血もなく正常です。正常所見は基本なので目に焼き付けておきましょう!)

b:真珠腫性中耳炎(ポイントは弛緩部(鼓膜の上側)の陥凹所見です。もともと真珠腫は耳小骨由来で発生しているのでツチ骨が鼓膜と接している位置、つまり鼓膜上部が破壊され陥凹しているのですね。)

c:滲出性中耳炎(ポイントはよく「アメ色」と称される滲出液が鼓室内にたまっているところです。黄色っぽい液ですね。また鼓膜緊張部(鼓膜の下側)の張りがない、光錐が見えないのも特徴です。)

d:急性中耳炎(見ての通り真っ赤っ赤ですね。いかにも細菌感染してます!って感じです。これは理屈よりもパッと見で急性中耳炎です。救外で目にする機会も多そうですね。)

e:慢性中耳炎(長期間細菌感染した鼓膜が破れています。鼓膜の穿孔ですね。破れているのは必ずと言って鼓膜の緊張部です。弛緩部には全く異常が認められませんね。これが真珠腫性中耳炎との違いです。よく真珠腫性中耳炎と見間違える方がいますが、比較してみると全然違いますよね。)

 

さて本文を読み返してみましょう。

比較的長期の症状ありから、a 正常、d 急性中耳炎は否定的です。

また耳痛、耳漏の自覚ないことから、e 慢性中耳炎も考えにくいですね。

純音聴力所見で左伝音難聴からは、b 真珠腫性中耳炎もc 滲出性中耳炎も考えられます。

実質、bとcの一騎打ちですね。

鑑別ポイントで最も重要になるのはこの一文

「側頭骨CTでは左上鼓室および耳小骨周囲に病変を認め、中頭蓋底に骨欠損を認めた。」です。

強い骨破壊性を持ち、頭蓋底まで及ぶとなれば

b 真珠腫性中耳炎(解答:b)

が解答となります。

先ほども解説した真珠腫性中耳炎の特徴に耳小骨の破壊というものがありましたね。

「強い(頭蓋底まで及ぶ)骨破壊性」=滲出性中耳炎

と押さえてしまっても構わないと思います。

参考文献も載せておくのでエビデンスを求める方はご参照下さい→リンクはこちら(中耳真珠腫進展度分類2015改訂案 )

 

さて、解答が割れてしまった選択肢

c 滲出性中耳炎

は何が誤っているのでしょうか。

滲出性中耳炎は非炎症性の中耳の滲出液であり、通常は急性中耳炎に続いて生じる。従って基本的には小児年齢で発症することが多く、今回は年齢から否定的と考えられるかもしれません。

ただ、成人症例では、悪性腫瘍または良性腫瘍を除外するため、上咽頭の診察を行わなければならない。とされています。(参考:中耳炎(滲出性)MSDマニュアル

従って上咽頭癌→耳管閉塞→滲出性中耳炎という可能性も否定はできません。

ではなぜ今回は否定的なのか…

それは臨床経過だと私は考えます。

本問の症例では、経過期間3年と比較的長期に渡り症状が継続しています。

悪性腫瘍の場合(特に上咽頭癌)には進行が早くここまでに他の重篤な合併症をきたすはずです。

また、先ほど説明した「頭蓋底の破壊」も上咽頭癌では認めにくそうですね。

以上より、cの滲出性中耳炎は誤りということになります。

 

 

いかかだったでしょうか。

本問は真珠腫性中耳炎のこれまでの国家試験の問題と比べると典型的な問題ではなかったかもしれません。

それぞれの予備校からの解答も参考にして耳鼻科領域、特に伝音性難聴の疾患をまとめておくと良いと思います!

以上です!

 
115回医師国家試験、誤答問題の全問解説はこちら→【第115回医師国家試験、気ままな研修医による全問題解説】