【115D75 全身性の衰弱状態を認める低栄養患者に対しての適切な静脈栄養、Refeeding症候群】
さていよいよDブロック最後の問題の解説ですね。
今回は、国家試験終了直後に大手国家試験対策予備校の解答速報でその解答が割れ、物議を醸した一問ですね。
私自身解いていて、なんとなくこれであっているかなということで解答を選び、難問だと認識していませんでしたが、
ふたを開けてみると解答速報時正答率27%と激割れ問題の一つでした。
115D71といい、この115D71といい…
いくら二日目のスタートとはいえ、難しい問題を午前中の最後の方に忍ばせてある国家試験まさに恐ろしいな…と思いました。
おそらく来年以降の受験生も良く押さえておくべき問題になるであろう115D75を一緒に見てみましょう!
【115D75 問題解説】
まずは67歳男性の主訴は食欲不振、体重減少、全身倦怠感ということで全身性の消耗性疾患であると推察されます。
読み進めていくと、「35歳から日本酒5合/日を毎日飲酒、3か月前から食欲が徐々に低下し通常の摂食量の1/5以下、体重は3か月間で10kg減少」と進行性に症状が起こってきていることが分かります。
検査所見にて、貧血、低栄養、肝酵素上昇、アミラーゼ上昇を認めますね。
また、電解質異常(低Na、低K、低P血症)も認めます。完全に低栄養ですね。
確実な診断をつけることは不可能ですが、膵癌か肝硬変かそのあたりによる全身症状と考えるのがベターかと思います。
しかしながら本問で問われている内容は、
「静脈栄養として適切なのはどれか。」
ということです。
全身性の衰弱状態を認める低栄養患者に対しての適切な静脈栄養について選ぶ必要があります。
まずビタミンB1と微量元素についてですが
低栄養の状態では不足していると考え、投与が必要ですね。
特にビタミンB1は国試でも有名なWernicke脳症をきたしてしまうために欠乏させないように投与すべきです。これは糖代謝の補酵素として消費されてしまうのでしたね。
従って、選択肢は
a 20%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は加え、微量元素も加える。
と
e 5%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は加え、微量元素も加える。
に絞られました。
ここまではほとんどの受験生がたどり着くことができました。
問題はここからです。ブドウ糖輸液はどちらの濃度を選択すべきなのか…
ここで、低栄養=糖分必要
と短絡的に考えてしまい、aを選択するとドボンなのですね。
実は、解答は
e 5%ブドウ糖含有電解質輸液1,500mL/日にビタミンB1は加え、微量元素も加える。(解答:e)
となります。
これは、飢餓状態に急激な再栄養を行うと、Refeeding症候群をきたしてしまうから。というのが理由になります。
Refeeding症候群については→『Refeeding症候群│救命救急センター 東京医科大学』が参考になります。
また国家試験の過去問でも出題されたことのあるテーマですね→113F44
飢餓状態で再栄養を行うと、様々な機序を経て、血中のP、Mg、Kなどが低下し心不全など重篤な症状を引き起こすのでしたね。
このあたりは自身でも確認しておきましょう。
本解説によると、「ハイリスク患者では、最大でも 10 kcal/kg/dayの栄養投与から始め、モニタリングしながら徐々に増量する。」
とあります。
選択肢aでは
1,500(g/day)×20%×4(kcal/g)÷60(kg)=20kcal/kg/day
より開始基準を2倍も上回っていることが分かります。
一方、選択肢eでは
1,500(g/day)×5%×4(kcal/g)÷60(kg)=5kcal/kg/day
よりしっかりと基準範囲内といえそうです。
Refeeding症候群を予防するためにも投与開始の栄養はできる限り下げる必要があるのですね。
以上より解答を選ぶことができました。
いかがでしょうか。
前述の通り、Refeeding症候群については過去問でも出題があったものの、
この問題の解答がその内容に該当することに気づき、かつ正確な投与開始基準を把握していた受験生は一体どれくらいいたのでしょうか…
解答速報後の各専門医の意見も割れているような問題で実臨床においては、このように簡単に考えることができないとも言われています。
あくまで今回の私の解答も厚生労働省の発表を受けて自分なりに作成してみましたが、まだまだ至らない点も多くあることかと思います。
各予備校から出版される過去問対策本に記載されている解答もしっかりとチェックして自分なりに理解を深めておくべき問題といえそうですね。
私自身も今後の臨床研修の中で現場の感覚をつかめるように勉強を重ねていきたいと考えております。
ともに目標に向けて1日1日頑張っていきましょう。
次回は、115回のE問題の解説予定です。
それでは、以上です!
115回医師国家試験、誤答問題の全問解説はこちら→【第115回医師国家試験、気ままな研修医による全問題解説】