【115F46 分娩第2期遷延の初産婦への適切な対応、経過観察vs帝王切開】
さて今回は、産婦人科の産科領域、”分娩”についての問題です。
この産婦人科という教科は小児科と並び、国家試験での出題数が多く、
内科とは独立した、その領域独自の考え方や知識が問われるので、苦手意識をもっている学生さんも多いかと思います。
私もその一人で、実習で産婦人科を一か月経験したものの、それだけで国家試験全ての分野をカバーできるはずもなく、
理解しにくい単元は教科書やネットを駆使しながら、イラスト付きで覚えていきました。
また、この教科はイメージや直感も大切なので、同級生の仲間たちにわからない問題は積極的に質問するように意識していました。
各大学ごとで、勉強部屋や自習室がおそらく与えられていると思うので、効果的に活用していきましょう!
今どきはLINEなどを使って優秀な友人に質問することもできますね。
他の国家試験対策サイトでも言われていることですが、
国家試験の勉強は決して1人だけでしてはいけません!
確かに総論・各論分野は相対評価で合否で決まりますが、それでも国試に受かるためには、周りの学生が知っている内容を同じように理解していることが大切です。
大学受験や学校のテストと異なり、資格試験である国家試験は周りと差をつけることが目的ではありません。
残りの勉強時間を逆算して、合格するために必要な知識・考え方を吸収するべきです。
1問でも多くの問題を解けるようにする力が大切なことは言うまでもありませんが、友人や周りの学習状況も把握して、本当に必要な知識を再確認していくことも非常に重要です。
長くなってしまいましたが、115F46の問題解説といきましょう!
【115F46 問題解説】
34歳の初産婦で陣痛発来と前期破水の診断にて入院となった患者さんですね。
来院したのは午前2時で、そこからの内診所見は下のようになっています。
午前2時:先進部は児頭を触知し、子宮口は2cm開大、展退度は50%、児頭下降度はSP-3cm。
午前8時:子宮口8cm開大、児頭下降度はSP-1cm、小泉門を1時方向に触知。
午前10時:子宮口は全開大したが、児頭下降度と児頭の回旋は変わらなかった。
午後2時:内診所見は変わらない。
お産の経過は
分娩第1期 | 陣痛の開始から、子宮口(子宮頸部)が完全に開く(全開大、約10cm)までの期間 |
分娩第2期 | 子宮口が完全に開大してから胎児を娩出するまでの期間 |
分娩第3期 | 胎児を娩出してから胎盤を娩出するまでの期間 |
とされており、本問の妊婦さんは、子宮口全開大は午前10時に完了しており
現在、分娩第2期の状態です。
この分娩経過にはおよその正常な時間が定められており、この時間を超えると第〇期遷延とされます。
初産婦 | 経産婦 | |
分娩第1期 | 720分 | 360分 |
分娩第2期 | 120分 | 60分 |
分娩第3期 | 20分 | 10分 |
およそ上記の時間とされているのでこれは覚えておきましょう。
これと併せて考えると、この妊婦さんは、分娩第2期の状態が午前10時~午後2時まで計4時間(240分)続いており、正常の120分を超えていることが分かります。
つまり、分娩第2期遷延状態です。
次になぜ、遷延が起こっているのかを考えます。
陣痛周期と胎児心拍陣痛図を見ると
陣痛周期:2〜3分間隔で持続時間は40秒。
胎児心拍陣痛図:基線→約130bpm、基線細変動→(+)、一過性頻脈→(+)
陣痛の状態や、胎児のwell-beingは良好といえますね。
さて以上より正常と考えて正解は
c 経過観察 としてよいのか…
実は、これは間違いです!
問題文をもう一度よく読んで、第2期遷延が起こっている理由を考えてみましょう。
すると、『身長147cm』、『推定胎児体重は3,880gであった』とあります。
ここでハッと気づいた方は正解できたかもしれませんね。
そうです、児頭骨盤不均衡(CPD)ですね!
「児頭骨盤不均衡│インターネットホスピタル」によると、
児頭骨盤不均衡(CPD)が疑われる所見として
①初産のお母さんで妊娠38 週になっても赤ちゃんが骨盤の中に下がってこない。
②お母さんの身長が150cm 未満で、特に145cm 以下の場合。
③子宮の計測で36cm 以上で、特に38cm 以上の場合。
④尖腹、懸垂腹のお母さん。
⑤過去に骨盤骨折や骨盤の変形を起こすような病気の既往のあるお母さん。
⑥過去の分娩で、難産だった場合。
⑦内診で尾骨の突出など骨盤の異常を確認した場合
をあげています。
本問妊婦は身長147cmであるので、疑われる値といえそうですね。
児頭骨盤不均衡(CPD)の治療方針としては、
骨盤そのものを拡大する方法はなく、確実に児頭骨盤不均衡と診断が付いている場合は、帝王切開術を選択します。
したがって、本問の解答は
d 帝王切開
ということになります。
いかがでしょうか…
この問題の解説を作成しながら、私自身、本文の大切な身体所見である”身長”を見落としてしまっていたのは大きな反省点だと感じましたが、
実際これだけでCPDと診断し、「適切な対応」として帝王切開を選ばせるのは無理があるのかな思いました。
正答率は71%と意外に高く、これらのヒントに気づけた人は難なく国家試験的にCPD=d 帝王切開と選択できたのかもしれませんが、
実際の臨床現場では、これだけで即、帝王切開に進むかは少し疑問が残ります。
「児頭骨盤不均衡│インターネットホスピタル」にもありますが、CPDの診断にはザイツ(Seitz)法や骨盤レントゲン撮影、超音波診断などを駆使して行われているようです。
これらの検査なく、いきなりオペ(帝王切開)といくのは少々、飛躍しているように感じてしまいました。
特に胎児心拍陣痛図でも胎児well-beingは保たれており、母体のバイタルも比較的安定していることから、急を要する局面でもないのかなと感じました。
産婦人科医でも、実際にその現場をみたこともないので、わかりませんがこの問題文中の条件から、解答を選ばせるのはいかがなものかなと思います。
例えば、「必要な検査はどれか?」や「治療方針として考えられるものは?」などの設問ならまだしも、「適切な対応はどれか?」というのは答えにくいのではないでしょうか。
この問題の解答解説に関しては他の予備校の解説も参考にして、次年度以降の国家試験対策に活かしていってほしいです。
また、私のこの考え方に意見や訂正がある場合にはコメントいただけると幸いです。
長くなってしまいましたが、今回はこれで以上です!
ちなみにこの問題は禁忌肢判定されている選択肢も紛れているので、要チェックです→『115回医師国家試験【禁忌肢】判明!禁忌肢落ちは何人?禁忌肢落ちを避ける方法は?│MEDIC MEDIA』