気ままなけんしゅー医のブログ

春から研修スタートの気ままな研修医のつぶやきブログです。

【115D61 蛋白尿をきたす糸球体疾患の鑑別、膜性腎症vs多発性嚢胞腎】

高血圧, 心臓病, 医療, 病気, 薬, 医学, ヘルスケア, 治療, 健康, 診断, パルス, ハートビート

115D61の解説です。

さて今回は解答速報時正答率30%と多くの受験生を悩ませた難問ともいえる

腎臓内科分野の問題ですね!

この腎臓内科という分野は出題問題数こそ例年10問弱とメジャー領域の中では少ないのですが(参考:循環器内科30問弱、呼吸器内科20問強など)

115D51で解説したような慢性腎不全と代替療法(透析や腎移植)の単元から、尿細管障害、糸球体疾患、急性腎不全の鑑別等

意外と範囲は広く、単純暗記のみで乗り切ることが難しいことから

苦手としている学生さんも多いかと思います。

実際、似たような名前の疾患も多く

その違いについて病態生理を理解した上で押さえるとなると、対策が必要と感じます。

例①)Batter症候群、Gitelman症候群、Liddle症候群

例②)膜性腎症、膜性増殖性糸球体腎炎、巣状分節性糸球体硬化症、微小変化型ネフローゼ症候群、溶連菌感染後糸球体腎炎

どうでしょうか…

 以上の疾患を自信もって理解できているかと聞かれると少しドキッとするかもしれません。

これはどの学生も同じです(私もそうでした(笑))

ただ多くの学生が苦手としている部分を系統だてて覚えることができれば、相対評価で合格基準が決まる国家試験にとっては

これほど有利なことはないといえるのも事実です。

まずは予備校のテキスト、教科書ベースに過去問を通じてトレーニングを積んでいきましょう!

それでは問題解説へと行きましょう。

今回は蛋白尿をきたした生来健康な中年女性の原因疾患についての鑑別が求められていますね。

腎臓内科では、糸球体の光学・電子顕微鏡所見や蛍光染色所見から糸球体疾患を鑑別させる問題が頻出ですが、今回は問題文のみからの判断となります。

ちなみに成人ネフローゼ症候群の診断基準は

尿蛋白3.5g/日以上(随時尿において尿蛋白/尿クレアチニン比が3.5g/gCr以上の場合もこれに準ずる)

血清アルブミン値が3.0g/dL以下

の二項目が必須事項ですが

今回の症例では、随時尿の尿蛋白/Cr比は2.5g/gCrと基準値を達しておらず

ネフローゼ症候群とは言えなさそうですね。

ただ、もちろん尿蛋白3+と十分高度の蛋白尿をきたしていることに間違いはありません。

 

順番に選択肢考察をしていきましょう。

まず、上記で説明したようにそもそもネフローゼ症候群の診断基準を満たさず、「体重は増減なく安定しており、浮腫を認めない。」と症状が比較的安定していることから

急激に症状が進行することがしられている

d 微小変化型ネフローゼ症候群(参考:微小変化型ネフローゼ症候群│小児慢性特定疾病情報センター

は否定的ですね。年齢的にも考えにくいですね。

 

次に、血尿がなくクレアチニンに異常がないことから

a IgA腎症(参考:IgA腎症│日本病巣疾患研究会

e 特発性半月体形成性糸球体腎炎(参考:急速進行性糸球体腎炎(指定難病)

は否定的ですね。

 

さて残るは

b 膜性腎症

c 多発性嚢胞腎

の一騎打ちです。

ちなみに解答速報時の解答割合は

b 膜性腎症(30%)

c 多発性嚢胞腎(59%)

でした。

 

さて解答はどちらなのか…

結論から言うと解答は、

b 膜性腎症(解答:b)

なんですね!

 

なんと59%もの学生がc 多発性嚢胞腎に引っかかってしまっています!

私もこちらを選んでしまいました…

なぜ誤っているのか自分なりに調べてみたので解説しますね。

 

まず本文中に「腹部超音波検査で右腎に2cm大の嚢胞を2個認めた。」とありますが、実際どうなのでしょうか。

多発性嚢胞腎(指定難病)」のサイトを根拠に解説します。

多発性嚢胞腎(今回は常染色体多発性嚢胞腎(ADPKD)で考えています)の診断基準によると、

家族内発生あり→CT or エコーで両腎に各々3個以上嚢胞

家族内発生なし→CT or エコーで両腎に各々5個以上嚢胞

が存在することと記載があります。(参考:ADPKD診断基準

今回の問題では、そもそも家族歴に関しては記載がないので、ADPKDと診断するには少なくとも両腎に5個以上の嚢胞が存在していることが診断根拠として必要ですが、

「右腎に2cm大の嚢胞を2個」

なので診断基準を満たしていないことになります。

またADPKDは多くの症例で、

進行性であり、60歳ごろまでに50%の症例で腎不全をきたす

と記載もあります。

この患者では64歳時まで生来健康であったことからこの点も合致しません。

さらにもともとADPKDの臨床症状は少ないとは言え、本症例が多発性嚢胞腎を示唆する所見に乏しいことも否定する根拠としては挙げられそうですね。

 以上より、

 c 多発性嚢胞腎

は否定的と判断されます。

 

一方、膜性腎症に関しては、『膜性腎症│日本腎臓学会』によると

「発症は比較的緩徐であり、ネフローゼ症候群以外に無症候性蛋白尿で発見されることもある。」

と記載もあり

ネフローゼ症候群や浮腫、体重増加まできたさない膜性腎症も考えられることから

本問の臨床経過は合致しうると言えます。

 よって解答は、繰り返しになりますが

 b 膜性腎症(解答:b)

となります。

 

 

いかかだったでしょうか。積極的には選びにくい選択肢だったのではないでしょうか。

おそらく、正答に至ることのできた学生も

消去法的アプローチから解答したのではないかと推察しております。

国家試験はあくまでマーク試験であるため、

 「与えられた選択肢から総合的に解答する力」は今後も必要とされそうですね。

腎臓内科の分野は鑑別問題も多く、良問が揃っているので

115回を中心に114回以降の過去問もしっかりと対策を積んでおきましょう!

皆さんにとって腎臓内科が得意分野となることを心より望んでおります。

では、

以上です!

 

115回医師国家試験、誤答問題の全問解説はこちら→【第115回医師国家試験、気ままな研修医による全問題解説】