気ままなけんしゅー医のブログ

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【115F52 新生児期嘔吐の鑑別│胃軸捻転症、緊急手術vs右側臥位保持】

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115F52の解説です。正答率48%

 

今回は、115回医師国家試験Fブロックの中でも、割れ問判定された有名な問題ですね。

解いているときは「つかみどころがない問題だな…」

と感じていましたが、試験終了後、友人とこの問題について話になったときには、自分の解答が誤っているのではないかと不安になりました。

さらに、場合によっては私の選んでしまった選択肢がもしかしたら禁忌肢判定されてしまうのではないかと最終日、最後のブロックにして不安は募るばかりでした。

全ての試験が終わり解放感に満ち溢れているはずの、大学へ向かう帰りのバスの中で一人ナイーブな気分になったのを覚えています。

結局、ふたを開けてみれば禁忌肢判定はされておらず、事なきを得ましたが、

それでも貴重な1点を落としてしまったことには変わりありません。

私だけに限らず、多くの受験生が悩み、誤答してしまった115F52の問題を解いていきましょう!

115F52問題全文・画像はこちら

日齢25の新生児期、女児。主訴は嘔吐ですね。妊娠経過には異常はなさそうです。嘔吐については、「完全母乳栄養で生後11日頃から哺乳後に1日2~3回の嘔吐を認めた。吐物は母乳様」だったそうです。排便は毎日あったみたいですね。

その他、体重増加不良は認めず(30g/日で増加)、バイタルも安定、身体診察所見、尿所見、血液所見も特筆すべき異常は見当たりません。

さて、まず画像を見てしまう前に現時点での鑑別を考えましょう。

新生児期の嘔吐の鑑別として、まず初めに胆汁性嘔吐であるか、非胆汁性嘔吐であるかを考えます。(参考:新生児期・乳幼児期の嘔吐│沖縄医報 Vol.43 No.6 2007

今回は、吐物は母乳様であることから、白色調と考えられ、非胆汁性嘔吐と分かります。

従って、病変部は十二指腸乳頭部よりも近位(食道、胃、十二指腸近位部)であることが推察されます。

これを基に画像読影といきます。

すると、造影されている胃が逆α型に捻じれてしまっている様子が確認できます。

これより、確定診断は”胃軸捻転症”ということになります。

胃軸捻転について知らなかったという方は→(参考:胃軸捻転│日本小児外科学会

さて、今回問われているのは「治療として適切なもの」ですね。

この新生児期・乳幼児早期に起こる胃軸捻転は、体重増加によって自然に軽快することも多く、基本的には体位療法などの保存的治療が勧められます。

胃の上部にのみミルクが溜まってしまうと赤ちゃんが吐きやすくなってしまうため、哺乳後の体位(右側臥位~腹臥位)により嘔吐を減少させることができます。

したがって本問の解答は、

e 右側臥位保持(解答:e)

となります。

 

さて、私含め多くの受験生が誤答してしまった選択肢、それが

a 緊急手術

です。上部消化管造影の画像を見慣れておらず、何かしら胃の部分に異常があることは推測できましたが、胃軸捻転という疾患を知らず、当然その解答も分からなかったため、侵襲的ではありますがオペを選択してしまいました。

受験後の話し合いで、保存的治療で十分と知ったときには、”緊急”手術とあまりの侵襲性の高さから禁忌判定されてもおかしくないと思いました。

この胃軸捻転に関しては、

幼児期になっても症状がよくならない慢性ないし間欠性胃軸捻転は,手術が必要になることがあるそうです。

保存的治療で改善しない場合にはオペも検討されるということですね。

ただ、”緊急”でいますぐオペすることはない。ということからaは誤りになります。

治療方針として誤っているわけではないが、タイミングがおかしいということより誤答となっていますが、問題が問題なら禁忌肢判定されていてもおかしくありません。

国家試験出題委員側も、新出の問題でかつ誤答率があまりにも高かったことから、禁忌肢判定とまでは決めきれなかったのかもしれません。

いずれにしても、小児・妊婦に対する侵襲性については慎重に吟味すべきですね。

禁忌肢を恐れるあまり、解答を選び損ねてはいけませんが、明らかな禁忌肢を選んでしまうことはさらに問題です。

近年、禁忌肢単独で不合格となった受験生はいないと言われているので、皆さんもよっぽど大丈夫だとは思いますが、

それでも気になる禁忌肢問題なので、十分注意して対策を続けていきましょう!

以上です!

 

115回医師国家試験、誤答問題の全問解説はこちら→【第115回医師国家試験、気ままな研修医による全問題解説】