【115D28 境界性パーソナリティー障害vs演技性パーソナリティー障害】
さて今回紹介する問題も国家試験後に解答が大割れした有名な問題ですね!
予備校の速報解答発表をうけて、私の周りの友人も
「え!?答えそっちなの!?絶対正解してると思ってたのに…泣」
と嘆いていましたね。
私もまったく同意見でした(笑)
正直解いているときは、まぁこれかな~という感じで選んで次の問題へ進めていたので
本番のメンタル的に他の問題に影響したことはなかったのですが
それでも誤答だと1問落とす形になるので好ましくないですね
さてそれではどういった問題だったのか一緒に見ていきましょう!
【115D28 問題解説】
「25歳の女性。異性関係や職場の人間関係のトラブルごとにリストカット繰り返してしたため母に連れられて来院。本人はイライラ感と不眠の治療のため来院したという。職場で複数男性との性的関係あり退職。親しい友人や元上司に深夜に何度も電話をかけていた。注意されると罵倒。相手が疎遠になるとSNSで自殺をほのめかし、自ら救急車を呼ぶことも。一方、機嫌がよいと好意のある相手にプレゼントなど、感情の起伏が激しい。」
この患者にみられることが予想される特徴はどれか。
a 繰り返し噓をつく
b 第六感やジンクスにこだわる
c 慢性的な空虚感を抱えている
d 完全癖のため物事を集中できない
e 自分が注目の的になっていることを求める
解答:c
精神科領域の問題なので要約文が非常に長くなってしまいました。
さてこの患者の診断はズバリ
『境界性パーソナリティー障害』ですね!
古くは99H6でも既出のこの疾患については知っている受験生も多かったのではないでしょうか。
境界性パーソナリティ障害の診断を下すには,以下の5つ以上により示される,不安定な人間関係,自己像,感情(すなわち,感情の調節不全)および顕著な衝動性の持続的パターンが認められる必要がある。
・見捨てられること(実際のものまたは想像上のもの)を避けるため必死で努力する
・不安定で激しい人間関係をもち,相手の理想化と低評価との間を揺れ動く
・不安定な自己像または自己感覚
・自らに害を及ぼしうる2領域以上での衝動性(例,安全ではない性行為,過食,向こう見ずな運転)
・反復的な自殺行動,自殺演技,もしくは自殺の脅しまたは自傷行為
・気分の急激な変化(通常は数時間しか続かず,数日以上続くことはまれ)
・持続的な空虚感
・不適切な強い怒りまたは怒りのコントロールに関する問題
・ストレスにより引き起こされる一時的な妄想性思考または重度の解離症状
参考:『境界性パーソナリティー障害│MSDマニュアルプロフェショナル版』
上記診断基準のうち太字の部分が本問に該当すると思われます。
また赤字に関しては今回の解答根拠ですね。
以上より、解答は:c 慢性的な空虚感を抱えている。となります。
診断基準を把握していると非常に分かりやすい問題でしたね!
では、なぜ割れてしまったのか…
それは、選択肢e 自分が注目の的になっていることを求める。
の誤答が大半だったのですね!(私も友人もそうです(笑))
これは実は『演技性パーソナリティー障害』についての説明なんです!
演技性パーソナリティ障害の診断を下すには、以下の5つ以上に示されるように、患者が持続的に自分の感情を大げさに表し、注目を求めている必要があります。
・注目の的になっていないと不快感を覚える。
・不適切なほど性的に誘惑的または挑発的な形で他者と交流する。
・感情がすぐに変わり、浅はかにみえる。
・自分に注意を引くため常に身体的外見を利用する。
・会話は非常にあいまいで、詳細に欠ける。
・感情を劇的で、芝居がかった、大げさな形で表現する。
・他者や状況にすぐに影響を受ける。
・人間関係を実際より親密なものとして捉える。
参考:『演技性パーソナリティー障害│MSDマニュアルプロフェショナル版』
どうでしょうか…
確かに感情の起伏や複数の性的関係については本問にも記載がありますが、その他の診断基準とは合致していないですよね…
従って本問題の診断→解答は
〇『境界性パーソナリティー障害』→〇c 慢性的な空虚感を抱えている。
✖『演技性パーソナリティー障害』→✖e 自分が注目の的になっていることを求める。
となるんですね…!
なんともややこしい話でした。
パーソナリティー障害の中での鑑別を必要とする問題だったとは、なかなかですね…
精神科領域の内容で今後も鑑別力を必要とする問題が増えていくのでしょうか…
この問題を通して再確認しておくことをおススメします!
以上です!
115回医師国家試験、誤答問題の全問解説はこちら→【第115回医師国家試験、気ままな研修医による全問題解説】