【115D51 末期腎不全患者に対する腎代替療法の選択と患者への説明について】
さて、今回も続けてDブロック、臨床各論の問題を見ていきましょう!
繰り返しになりますが、私自身このDブロック各論が115回医師国家試験の全ブロックの中で一番難しく感じました。
「雰囲気で解けそうだが絞り切れない…」
「そこまで細かい知識は勉強していなかった…」
といった気持ちを感じていましたが、この問題も例外ではありません。
解答速報時の正答率56%と他の受験生の皆さんもかなり苦労して解答を選んだことと思います。
根拠をもってしっかり解答できるよう学習していきましょう!
それでは問題を確認してみましょう。
【115D51 問題解説】
「84歳男性。腎機能低下を主訴に来院。10年前から腎機能低下を指摘されて自宅近くの診療所を定期受診していた。1か月前の定期受診で腎機能がさらに低下していたため、腎代替療法の準備を進められて受診。55歳から高血圧症に対して内服治療。65歳時に腎癌のため左腎を摘出し、再発なく経過している。退職後はパソコン講師を務めている。82歳の妻と2人暮らし。」
「左腰背部に手術痕。両下肢に軽度の浮腫。尿素窒素 58mg/dL、クレアチニン 3.2mg/dL、eGFR 15mL/分/1.73m²、K 4.5mEq/L」
腎代替療法の選択にあたりこの患者への適切な対応はどれか。
a 腹膜透析は可能である
b 夫婦間腎移植は可能である
c 療法開始後の就業はできない
d 療法開始後の旅行はできない
e 療法選択前に認知機能評価が必要である
本文は必要そうなところを抜き出してみました。
まずそもそも「腎代替療法」とは血液透析治療、腹膜透析治療、腎移植といった末期腎不全の治療手段のことを指すのでしたね。
順番に選択肢のチェックをしていきます。
これらの療法を開始しても、例えば腎移植や腹膜透析を選択した場合には「就業(本症例はパソコン講師)」「旅行」ができないということはなく、選択肢c、dは外すことができます。ちなみに血液透析でも旅行先での透析施設の確保ができれば可能です。(参考:腎代替療法選択ガイド-日本腎臓学会)
次に、b 夫婦間腎移植についてですが、『日本腎臓学会のホームページ』によると、「生体腎ドナーとしての適応、条件については、基本的条件として原則、6親等以内の血族、配偶者、3親等以内の姻族に限定されています。」とされており、夫婦間の生体腎移植も認められていますが、
基本となる適応基準として「年齢は20歳以上70歳以下(80歳以下)」と示されています。本症例では、妻の年齢が82歳と記載があり、高齢のために生体腎移植のドナーとしては適切でないと分かります。
そして、e 療法開始前の認知機能評価についてですが、確かに開始前にスクリーニングとして認知機能評価を行うことに問題はありませんが、「必要である」かというと疑問が残ります。
先ほど引用した腎代替療法選択ガイド-日本腎臓学会にもこれに関しては記載がなく、いわゆる「積極的には選びにくい」ということで外すこととなります。
最後に残った選択肢 aについて確認していきましょう。
a 腹膜透析は可能である
かどうかですね。
こちらのサイト(Baxter)を参考にさせていただきました。
これによると
「腹部既往歴のある患者であっても、頻回の腹痛、イレウスの既往などの腹部症状が特になければ腹膜透析(PD)導入を試みる価値はあります。」
とありますね。
本症例でも左腎の摘出の既往はあるものの、その後の臨床症状に異常はなさそうですね。
またそもそも、腎臓は後腹膜臓器なので、左腎摘出術では腹膜自体に損傷が及ぶことは少なそうですね。
そういった理由からも、本症例で腹膜透析を実施することは可能であるといえそうですね。
従って解答は
a 腹膜透析は可能である(解答:a)
となります。
いかがでしょうか。
一つずつの選択肢を丁寧に見ていけばそこまで無理なく解くことができそうですね。
私は、左腎の手術既往あり→腹膜透析✖と考えてしまいましたが、実際は可能みたいですね。
腎機能の温存目的、また心臓への負担を減らすという観点からも導入を優先させることの多い「腹膜透析」ですが
今後さらに国試で突っ込んだ内容が出題されるかもしれませんね。
『腎代替療法』全般の知識をお使いの参考書中心にもう一度チェックしておきましょう!
以上です!
115回医師国家試験、誤答問題の全問解説はこちら→【第115回医師国家試験、気ままな研修医による全問題解説】